コラム

借金にも時効があるってホント?消滅時効援用って何?

借金にも時効があると耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか?
実は借金にも時効があるとは言え、時効を迎えれば滞納した借金を返済しなくてよくなる、という訳ではありません。

借金の時効には条件があり、中には時効の期間が途中で振り出しに戻るケースもあります。
そこで今回は借金の消滅時効や消滅時効援用についてわかりやすくご紹介します。

借金の時効とは?

お金を返済して貰える権利は基本的に個人間融資で10年、消費者金融等・業者からの借金は5年と法律で定められています。(商法522条)

貸した側がこの一定期間、債権の回収をする権利を行使しないでいると権利が消滅するのですが、これを消滅時効と言います。

お金を借りた人から見ると、この期間を過ぎれば借金を返す義務を消失するという事になります。

時効を過ぎるだけでは借金は消えない?

先程の消滅時効を過ぎると返済義務は消失しますが、ただ待っているだけでは借金は無くなりません。
これは長期間経過後であっても返済したいという方もいらっしゃる為、本人の意思で選べるようにする必要があるからです。

そのため借金を無効にするためには消滅時効の制度を利用を融資者に宣言し、そこで初めて借金は消えます。

これを時効援用の意思表示と言います。

時効援用で注意する事

消滅時効援用を相手に伝える方法は口頭でも構いませんがトラブルを避ける為に証拠が残る内容証明郵便を利用する事が一般的です。

そのうえで必ず消滅時効援用制度を利用する事も明記しなければなりません。

制度を利用する事を伝えずに「長い間払っていないから返さなくても良いでしょう」などと状況を伝えるだけでは効果がありません。

時効援用通知について書き方が不明・自分では自信が無い、という場合は債務整理を扱っている弁護士・司法書士に依頼することで作成してもらう事が可能です。

時効の期間は?

期間について上記にもしましたが、正確には以下のように決められています。

  • 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
  • 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

少々わかりにくいですが、簡単に言うと

  • 支払期日の翌日が消滅時効の起算日となる

という事です。

下記の例を見て行きましょう。

消滅時効の例

例えば100万円を、以下のように借入れたとすると、

  • 2019年6月1日に借入れ
  • 1年後の2020年6月1日に返済する契約

借入れから1年後(返済日)の2020年6月2日時点から時効を数え出す事になります。

そのため債権が時効を迎えるのは

  • 5年後の場合→2025年6月2日から
  • 10年後の場合→2030年6月2日から

となります。

ただし、全ての借金がこの通りとは限らないので専門家に判断を仰ぐのが得策です。

分割払いの場合は?

借り入れする際は分割になる事も多いですが、分割の場合は毎月の支払いに対して時効期間を数えるのが普通です。

全額返済が数年後の場合は?

仮に全ての分割支払いが9年後に終わる契約だった場合、借りてから9年経たった時点からでないと時効期間が進まないか、と言われるとそうではありません。

殆どの場合、契約時に定められた回数の返済を怠ると全額を一括で返済することが定められているからです。

本来分割で支払うはずのものが一括での返済を要求される状態のことを、期限の利益を喪失と言います。

期限の利益消失からカウント

期限の利益を喪失すると分割での支払を約束していても全額について返す義務が発生するので、この時点から全額でカウントし始めます。

少々わかりにくい場合は、下記の例を参考にしましょう。

例)分割返済で100万円借入れた場合

  • 借入れ日:2018年4月3日に100万円借入れ
  • 返済条件:2027年4月で完済(分割)

  • 2020年4月3日に返済が滞る

  • 2020年4月15日

一括返済を求められる(期限の利益喪失)
※この時点で全額カウントスタート

■この場合の時効期限

  • 5年時効の場合→2025年4月16日から
  • 10年時効の場合→2030年4月16日から

かなり省略した例えですが、貸金業者の契約によって「何回返済を滞らせると一括返済してもらう(期限の利益を消失する)」といった内容が決まっていますので。

奨学金などの例外ある借金に注意

ただし、奨学金などの非営利な借金は返済が滞っても期限の利益を喪失しない場合があります。
こうした借金は全て、それぞれの支払期限が来てから数えることになります。

時効の更新に注意

消滅時効を迎える前に法律に定められた要件を満たす動きがあると時効の進行が更新される事があります。

更新とは時効がリセットされ数え直しが始まるという事です。

更新があるとどうなる?

更新に該当する動きがあった時点で、進行していた時効期間は振り出しに戻ります。

更新に該当する代表的なものは以下のとおりです。

時効更新の該当例3つ

  • 請求
  • 差押え/仮差押え又は仮処分
  • 債務の承認

ここで言う請求は裁判上の請求の事です。

債権者からの電話や裁判所を通さない書類を送ってきたりしただけでは更新はしませんが、最大で6ヶ月間時効期間を延ばす効果があります。

裁判上の”請求”に注意

裁判上の請求による時効の更新は裁判にかけられたり支払督促の申し立てをされたりすると発生し、成立するとその時点から時効のカウントがやり直しになります。

裁判所から書類が届いた場合は必ず内容を確認し適切に対応しましょう。

公示送達に注意

郵便物が届かない場合も公示送達などといった形で何も届かないまま判決が出てしまうケースもあります。

ですから借金がある場合や書類が届いた場合は早めに司法書士など専門家に相談する事をお勧めします。

公示送達とは?

  • 相手方の住所、居所が不明な場合
  • 相手方が海外在住の場合
  • 相手方が不明な場合

など交付文書の証明が取れない際に、法的に送達したものと見なす手続きのこと。

差押え/仮差押え又は仮処分

債権者が債務者の財産に対して差押え・仮差押え又は仮処分を行った場合は時効が中断します。

例えば住宅ローンを滞納して住宅ローン債権者である銀行が住宅の競売を行った場合。

不動産が差し押さえられますので競売申立ての時点で住宅ローンの消滅時効が中断します。

ただし、競売申立てが取り下げられた場合、時効中断の効果は申立ての時に遡って消滅します。

債務の承認

債務の承認とは借金がある事を認めるような行動をする事で、債務の承認がされるとその時から5年は時効援用が出来ません。

代表的な行為は返済です。

時効が来るまでの間に一度でも返済があるとそこで時効のカウントはリセットされます。

また支払い猶予を申し出る行為も債務の承認にあたり時効は中断されます。

時効経過後に債務の承認をしてしまった場合も時効援用権喪失となりますのでご注意ください。

何年で時効になるか自分ではわからない

ここまでの説明を読んでも自分の時効成立がいつかわからずに不安だという方も多いと思います。

その場合は専門家に相談する事をお勧めします。

何故なら届いた書類にびっくりして債権者に連絡したり・どうしたらいいかわからず時間が経ったまま裁判で判決が下ってしまったりすると、時効が延長されてしまうからです。

また時効の期限は過ぎているのに時効援用の手続きのやり方がわからないせいで損をする可能性もあります。

ですので一人で解決しようとせずに早めに司法書士などの専門家を頼りましょう。

まとめ

今回の記事をかんたんにおさらいしましょう。

時効援用についてまとめ

  • 借金には時効があり支払い期限から5〜10年。
  • 時効で借金を消すには時効援用の意思表示が必要。
  • 時効の期間は支払日の翌日から数える。
  • 分割払いでも期限の利益を喪失すると全額について時効のカウントが始まる。
  • 時効は様々な要因で更新されてリセットされる事がある。
  • トラブルを避ける為に専門家に早めの相談を。

今回は借金に関する時効や、時効を有効にする”時効援用”についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

時効援用に関しては条件が厳しいところもあり、成立させるには専門の知識がある法律家に頼る事が一番です。

くすの木総合法務事務所ではこちらから債務整理に関する無料相談を受け付けており、費用が心配な方には分割・後払いのご相談も承っております。

長期返済の行っていない借金がある場合は、まずは一度・専門家への相談を検討されてみてはいかがでしょうか?

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